ほしばん絵ろうそく店

会津絵ろうそくを今に伝える老舗 ほしばん絵ろうそく店

今回は創業が1772年の老舗でろうそく販売店の元祖「ほしばん絵ろうそく店」のご紹介です。

その前にまず、絵ろうそくの歴史について。
会津絵ろうそくは、約500年前に会津藩主だった芦名盛信公が、領内の農民に漆樹の栽培を奨励し、漆器の製造と共に、その実から最上級の木ろうを採取し、ろうそくを作らせたことに始まります。
本格的に作られるようになったのはその後で、蒲生氏郷公や保科正之公が会津の産業を発展させるため、漆樹の栽培を保護奨励し、漆や蝋が多く生産されるようになってからです。
しかし役人が管理していた漆の木は戊辰戦争の終わりと同時に野放しにされ、明治中頃になると約20万本もあった漆の木は全滅してしましました。
そして漆の代わりに現在の絵ろうそくの原料となるハゼの実を使った絵ろうそくが新たに生まれたのです。

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絵ろうそくの原料であるハゼの実を使って出来るのが『ハゼ晒し蝋』と『ハゼ蝋』です。この2つを使ってろうそくを作っていきます。

燈芯は和紙と藺草の幹を使用しています。

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ほしばん絵ろうそく店は9代目の星さんが奥さんと息子さんとで制作・販売しています。
七日町駅から3分程歩いたところお店があります。
暖簾をくぐり店内に入ると、約10畳程の敷地に色とりどりの絵ろうそくが並べてありました。
また、絵ろうそく立ても沢山置いてありました。
もともとは3畳程でひっそりと作っていた絵ろうそくですが、観光客が増えるとともにお店も広くしていったそうです。

絵ろうそくの柄は先代から受け継いだものだけではなく、ご夫婦で新たにデザインしたものもあり現在は全部で15種類あります。
ちなみに星さんは椿の柄が一番のお気に入りだそう。
今は観光客向けに赤べこや起き上がり小法師などが描かれた絵ろうそくなど目にしますが、星さんご夫婦は日本の伝統的な花木の絵ろうそくしか作らないというこだわりを持っているそうです。職人魂がひしひしと伝わってきますね。

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星さんにこの仕事について聞きました。
『やっぱり伝統を継ぐっていうことに誇りを持っているし、とっても嬉しいことだよ。そして、作ったものを店頭に出してお客さんに綺麗ですねって褒められるとやりがいを感じるね。』と嬉しそうに話す星さん。
人とのコミュニケーションを大切に接しているそうです。また、他県から来る観光客の方と話すのが星さんの楽しみになっているとか。『休みはないんだけどね』と笑いながら話して下さいました。

ハゼの実で作った絵ろうそくはとっても繊細で、石油が原料の世間一般に普及しているろうそくとは作る手間が全然違います。まずは温度。普通の蝋は約40度で溶けますがハゼ蝋は60度にならないと溶けません。そしてすぐ固まってしまうのでとても扱いにくいです。温度も重要で常に28℃~30℃に保っています。また、絵ろうそくは極端に冷めたり熱くなったりするのを嫌い、一気に流して固めてしまうとヒビが入ってしまいます。ですから薄く少しずつ重ねながら太くしていきます。とても根気のいる作業で1日1mmも太くならないことがあるそうです。

そして買ってすぐのろうそくよりも、そこから1ヶ月~2ヶ月寝かせたろうそくの方が綺麗な赤色に灯るそうです。
専門店だとこういったアドバイスをしてくれるのも嬉しいですね。

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そしてこちらの絵ろうそく店にしかないであろう、約120年前の絵ろうそく。粉が吹いて曇っているそうです。
星さんはこれを「呼吸しているみたいだよね」と話していました。確かに。とても神秘的な感じがします。
スピードと根気のいる絵ろうそく作り。
絵ろうそくについて語っている星さんは、とても楽しそうに話しているのが印象的でした。

絵ろうそくに灯った温かな火を見つめて、日常にちょっとだけほっとする時間を作ってみるのはいかがでしょうか。

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ほしばん絵ろうそく店

TEL
0242-27-1873
住所
福島県会津若松市七日町3−33 地図
営業時間
9:00~19:00 (事前に連絡することをお勧めします)
定休日
不定休
価格
1番人気の5匁(145mm)¥840、絵付け体験も受け入れ可(要予約)2本入り¥1,100~

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